実質的成立要件⇒各当事者の本国法(法例第13条第1項)

日本人⇒民法
外国人⇒外国人の本国法


反致により外国人にも民法が適用される場合があります。反致とは、法廷地国たるA国の国際私法によれば、B国法によるべき場合において、B国の国際私法によれば、逆にA国法によるべきものとされる場合です。



形式的成立要件⇒婚姻挙行地の法律(法例第13条第2項)
 

婚姻挙行地の法律=民法、戸籍法


外国人当事者の本国法の定める方式によって婚姻をしても(例えば、日本人と外国人が当該外国人の本国の駐日領事館で婚姻を挙行した等の場合)、わが国ではその婚姻を有効なものと認めることはできません(法例13条3項但書)。
 

戸籍法の規定にもとづく届出(創設的婚姻届出)(民法第739条、戸籍法第74条)


市区町村長は、婚姻届を受理するに際し、「婚姻成立の実質的成立要件」を具備しているかどうかを審査します。当事者の具体的な身分関係を明らかにし、その上で当事者がその本国法の定める婚姻の要件を具備しているか否かを審査します。
 
 
【再婚禁止期間ないし待婚期間】

「再婚禁止期間ないし待婚期間」は、出生子の父性推定の混乱を避ける趣旨で認められるものであり(民法733条)、当事者双方に関係する問題であるから双面的婚姻障害と解されています(山田鐐一著「国際私法新版」406頁参照)。


その結果、英国法、ポーランド法、中国法などには再婚禁止期間はありませんが、例えば、英国人女が日本人男と結婚する場合には、日本人男の本国法である日本民法に再婚禁止期間の定めがある以上(父性推定の混乱により夫は被害を受ける)、再婚禁止期間は婚姻できません


もっとも、制裁的または教育的、警告的な目的をもつ再婚禁止期間の定めは、再婚禁止期間を課せられた当事者の一面的婚姻障碍の問題として、専らその当事者の本国法によるべきです(溜池良夫「国際私法講義第2版」403頁参照)。
 
 
【再婚禁止期間と中国人との婚姻】


中国国際私法(民法通則147条)は、婚姻の実質的要件も「婚姻挙行地の法律を適用」するとしているため、そもそも、中国人女と日本人男が日本で婚姻する場合、中国法は適用されません。


よって、中国法に再婚禁止期間があるなしに関係なく、中国人女にも日本民法の再婚禁止期間の定めが適用されるので(もちろん、双方的婚姻障碍として日本人男にも)、その結果、再婚禁止期間は婚姻できません。
 

【国際結婚と日本人の氏】


婚姻など身分行為に伴う氏の変更は、戸籍実務上、夫婦それぞれの人格権の問題として、各人の本国法によるべきであるとされています。


この点、民法750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する。」としています。


しかし、外国人には日本民法上の氏がないため、夫婦の称すべき氏を選択することはできず、夫婦はそれぞれ婚姻前の氏を称すべきものとされております(昭和40年4月12日民事甲838号回答)。


もっとも、戸籍法によって、日本人である配偶者の氏の変更につき、簡便な手続が設けられております。


戸籍法107条2項

「外国人と結婚した者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、
その者は、その婚姻の日から6ヶ月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、
その旨を届け出ることができる。」
 


【参考文献】

溜池良夫「国際私法講義第2版」(有斐閣)

山田鐐一「国際私法新版」(有斐閣)

南敏文編著「はじめての渉外戸籍」(日本加除出版株式会社)

「戸籍六法」(テイハン)




A国に在留する日本人とB国人が、A国またはB国で婚姻する場合


「婚姻挙行地」である外国の方式で婚姻可能(法例13条2項)−原則

A国またはB国の方式での婚姻=日本でも有効


「当事者の一方の本国法によりたる方式」で婚姻することもできます(法例13条3項本文)

日本の方式またはB国の方式での婚姻=日本でも有効

なお、外国において婚姻手続きを行う場合、外国の官公署から、婚姻について何らの障害のない旨(婚姻適齢、重婚、再婚禁止期間等)の「婚姻要件具備証明書」の提出を求められる場合があります。

市区町村長、法務局長、在外公館の長は「婚姻要具備証明書」を発行することができます。



【日本人同士が外国で日本の方式により婚姻する場合】


「当事者の一方の本国法(=日本法)によりたる方式」(法例13条3項本文)として可能です。


さらに、戸籍法は、内外すべての日本人について属人的に適用されるので、日本の市区町村長に郵送や第三者への委託により婚姻届を提出することもできますが、民法741条により、日本の大公使または領事に婚姻届(創設的婚姻届)を提出することもできます。
(外交婚・領事婚、戸籍法40〜42条)

しかし、日本人と外国人が、外国で日本の方式により婚姻する場合(「当事者の一方の本国法(=日本法)によりたる方式」(法例13条3項本文)として日本の方式で婚姻することが可能です)は、


戸籍法40条が日本の大公使または領事に創設的な届出をすることができる者を「外国にある日本人」に限っており、日本の大公使または領事に日本人と外国人とが届出人となる創設的な届出の受理権限を与えていないためできません。


よって、この場合、日本の市区町村長に郵送や第三者への委託により婚姻届を提出することになります。



当事者である日本人は、「婚姻の成立を証明する書面」を、その戸籍謄本とともに婚姻成立の日から3ヶ月以内に、本籍地の市区町村長に提出して婚姻の届出(報告的婚姻届出)をしなければなりません。


当事者である日本人が外国にいる場合には、婚姻成立の日から3ヶ月以内にその国に駐在する日本の大使等に提出すれば、大使等はこれを遅滞なく外務大臣を経由して本人の本籍地の市区町村長に送付することとされています(戸籍法41条、42条)。




① 婚姻の実質的成立要件

⇒各当事者の本国法(法例第13条第1項)で判断


婚姻の実質的成立要件:

婚姻の成立要件のうち、形式的成立要件、すなわち方式を除いた要件、有効な婚姻が成立するために必要な積極的もしくは消極的要件

② 婚姻の形式的成立要件

ⅰ.婚姻挙行地の法律(法例第13条第2項)

 または


ⅱ.当事者の一方の本国法によった方式(法例第13条第3項本文)
※日本で婚姻を挙行した場合で当事者の一方が日本人である場合は適用されません。

 


形式的成立要件(l婚姻の方式):

届出とか儀式といった婚姻の外部的形式としての意思表示の表現方法


婚姻の実質的成立要件:

婚姻の成立要件のうち、形式的成立要件、すなわち方式を除いた要件、有効な婚姻が成立するために必要な積極的もしくは消極的要件


積極的要件:婚姻が成立するために存在することを必要とする要件

消極的要件:婚姻が成立するために存在しないことを必要とする要件


婚姻障碍:積極的要件の不存在あるいは消極的要件の存在

一面的婚姻障碍(一面的要件):

「婚姻適齢に達しないこと」「父母、祖父母、後見人等の同意のないこと」「精神的ならびに肉体的に障害のあること」「婚姻意思のないこと」など相手方と関係なく当事者の一方にのみ関するもの

⇒一方の当事者の本国法を適用

双面的婚姻障碍(双面的要件):

「近親関係にあること」「相姦関係にあること」「人種上・宗教上の理由にもとづき禁止されている男女関係にあること」「配偶者のある者 が重ねて婚姻すること」「再婚禁止期間ないし待婚期間に違反すること」など相手方との関係において婚姻の障碍となるもの

⇒双方の当事者の本国法を適用(累積的適用)



形式的成立要件(l婚姻の方式):

届出とか儀式といった婚姻の外部的形式としての意思表示の表現方法


【婚姻挙行地法主義】

婚姻挙行地法主義とは、婚姻の実質的成立要件の問題は、婚姻挙行地の法律により規律されれべきであるとする考えです。


今日、アメリカのほか、ブラジル、アルゼンチン、ペルー、チリなどの中南米諸国、フィリピン、ロシアなどの国際私法で原則的に採用されています。また、中 国の国際私法(民法通則147条)においても、中国人と外国人との婚姻についてこの主義が採用されています。


(根拠)

1.婚姻の成立に関与する公的機関が、当事者の属人法をいちいち調査するのは煩わしく、
婚姻の成否をそのよく知らない法律によらしめることは妥当ではないこと

2.属人法によれば婚姻の成立が認められない場合であっても、挙行地法により認めるときには
これを認めて婚姻の成立を容易にすることが望ましいと考えられること

3.アメリカや中南米諸国は、開拓民や移民の受入国であったため、彼らが自ら決別してきた国の法律に拘束されるのは不合理であると考えたこと



 

【国際結婚のパターン】

当事者の国籍と婚姻挙行地の組み合わせから、それぞれの方式が日本国国際私法上有効かどうか検討しました。

「効力」 ○=有効 ×=無効

当事者 当事者 婚姻挙行地 方式 効力 可否の理由、注意点
日本人 日本人 日本 日本法 国内的私法関係なので、民法の本来的効力として日本法による婚姻が可能
日本人 日本人 日本 外国法 × 「婚姻の方式」は「婚姻挙行地の法律」による(法例13条2項)
日本人 日本人 外国 日本法 「当事者の一方の本国法によりたる方式」は「有効」(法例13条3項本文)
日本人 日本人 外国 外国法 「婚姻の方式」は「婚姻挙行地の法律」による(法例13条2項)

※日本人同士の婚姻手続が可能かどうかは、当該外国法次第です
※婚姻成立の日から3ヶ月以内に、婚姻届(報告的婚姻届)を本籍地の市区町 村長または日本の大使、公使又は領事に「婚姻の成立を証明する書面」を提出しなければなりません
日本人 外国人 日本 日本法 「婚姻の方式」は「婚姻挙行地の法律」による(法例13条2項)
日本人 外国人 日本 外国法 × 「日本において婚姻を挙行したる場合において当事者の一方が日本人なるとき」は、「当事者の一方の本国法によりたる方式」は「有効」とはなりません(法例13条3項但書)
日本人 外国人 外国 日本法 「当事者の一方の本国法によりたる方式」は「有効」(法例13条3項本文)

※民法741条は、日本人同士が外国で婚姻を挙行する場合の規定なので、この場合、日本の市区町村長に郵送や第三者への委託により婚姻届を提出することになります
日本人 外国人 外国 外国法 「婚姻の方式」は「婚姻挙行地の法律」による(法例13条2項)

※婚姻成立の日から3ヶ月以内に、婚姻届(報告的婚姻届)を本籍地の市区町 村長または日本の大使、公使又は領事に「婚姻の成立を証明する書面」を提出しなければなりません
日本人 外国人 第三国 日本法 「当事者の一方の本国法によりたる方式」は「有効」(法例13条3項本文)

※民法741条は、日本人同士が外国で婚姻を挙行する場合の規定なので、この場合、日本の市区町村長に郵送や第三者への委託により婚姻届を提出することになります
日本人 外国人 第三国 外国法 「当事者の一方の本国法によりたる方式」は「有効」(法例13条3項本文)

※婚姻成立の日から3ヶ月以内に、婚姻届(報告的婚姻届)を本籍地の市区町 村長または日本の大使、公使又は領事に「婚姻の成立を証明する書面」を提出しなければなりません
※第三国で外国人当事者の本国法による方式に基づく婚姻手続が可能かどうかは当該外国法次第です
日本人 外国人 外国 第三国法 × 「婚姻の方式」は「婚姻挙行地の法律」(法例13条2項)か「当事者の一方の本国法」(法例13条3項本文)による必要があります
外国人 外国人 日本 日本法 「婚姻の方式」は「婚姻挙行地の法律」による(法例13条2項)

※戸籍法は、日本に居住する外国人にも、属地的効力として適用されるので、外国人同士が婚姻した場合でも、婚姻届を提出する必要があります
※日本で行った婚姻手続が外国人各当事者の本国でも有効かどうかは、当該各外国法次第です
外国人 外国人 外国 日本法 × 「婚姻の方式」は「婚姻挙行地の法律」(法例13条2項)か「当事者の一方の本国法」(法例13条3項本文)による必要があります
外国人 外国人 外国 外国法 「婚姻の方式」は「婚姻挙行地の法律」による(法例13条2項)
外国人 外国人 外国 第三国法 × 「婚姻の方式」は「婚姻挙行地の法律」(法例13条2項)か「当事者の一方の本国法」(法例13条3項本文)による必要があります
外国人 外国人 第三国 第三国法 「婚姻の方式」は「婚姻挙行地の法律」による(法例13条2項)
外国人 外国人 第三国 外国法 「当事者の一方の本国法によりたる方式」は「有効」(法例13条3項本文)

※婚姻の実質的成立要件は、それぞれの当事者の本国法によります。

(日本人⇒日本法、外国人⇒当該外国法)

 

※「可否」は日本の国際私法上有効か否かです。外国人当事者の本国法や第三国法でも有効かどうかは、当該外国法次第です。

 

※第三国法とは、当事者以外の国の法律を意味します。




夫または妻が外国人の方の場合、その夫または妻は、当然には日本国に在留できません。在留資格「日本人の配偶者等」を取得することにより、永続的に日本に在留することが可能となります。

※日本人と結婚している外国人の方でも、在留資格「永住者」、在留資格「人文知識・国際業務」などの就労資格で在留している方もいらっしゃります。


※就労資格で在留している外国人は、当該就労資格で許されている仕事しかできませんが(「人文知識・国際業務」でコックをすることはできません)、「日本人の配偶者等」という在留資格は、活動内容に制限がないため、アルバイトを含め違法でない限りどのような仕事もできます。



では、日本人と結婚すればだれでも「日本人の配偶者等」を取得できるのでしょうか?

婚姻届を提出し婚姻関係が戸籍に記載されれば直ちに「日本人の配偶者等」の在留資格が付与されるというわけではありません。すなわち、形式的に婚姻の法的手続き行うだけでなく、その婚姻に実態のあること(婚姻の真実性)を申請人側が積極的に地方入国管理局に対して立証する必要があります。


なお、結婚相手の外国人の方が不法入国者(偽装旅券で入国など)や不法在留者(いわゆるオーバーステイ)などの不法滞在者である場合には、たとえ日本人と結婚しても退去強制手続を免れることはできません。

もっとも、日本人の配偶者がいることは退去強制手続における法務大臣の裁決にあたって、有利な情状の一つにはなり、婚姻実態によっては、法務大臣の裁決時、法務大臣による在留特別許可がなされる可能性があります。


【一般】



1.婚姻(外国または日本にて)



2.地方入国管理局に「日本人配偶者等」の在留資格認定証明書交付申請



3.在留資格認定証明書の交付

・申請から3ヶ月から4ヶ月程度(東京の場合)

・お見合いしてから短期間で結婚した場合など交際期間が短い場合は不交付となる確率が高くなります。

・1度目の申請が不交付でも2度目、3度目の申請で交付されている方も沢山いらっしゃります。真実の結婚であればあきらめないことが大切です。


4.在留資格認定証明書(原本)をEMSやDHLで海外在住の配偶者に郵送

・海外は郵便事故が多いので普通郵便は避け安全な方法で郵送します。

・在留資格認定証明書のコピーを日本側で保存しておきます。



5.海外在住の外国人配偶者が在外日本大使館・領事館にて日本国査証(ビザ)の申請

・在留資格認定証明書その他を必要書類を添付します



6.日本国査証(ビザ)発給

・申請から発給まで1週間程度です。

・在留資格認定証明書の交付は、査証発給を約束するものではありません。



7.来日

・来日後、市区町村役場にて外国人登録をしてください

・出国する場合は、必ず地方入国管理局にて「再入国許可」をもらってください。急な事情で出国する場合もありますので、来日後なるべく早く「再入国許可」をもらっておいてください。




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行政書士 林 幹
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