2010年09月30日

上陸特別許可Q&A−上陸特別許可、上陸の拒否の特例の理解のために


【一般】(平成21年改正入管法対応)

上陸特別許可、上陸の拒否の特例に係る基本事項を質疑応答形式でご説明致します。



Q1.上陸特別許可、上陸の拒否の特例とは?


A1.オーバーステイにより退去強制処分となってから、いまだ5年間経過してないなど入管法の規定する一定の場合には、「上陸拒否事由」に該当するので、日本に入国することができません。


しかし、日本人と結婚しているなどの人道上考慮すべき特別の理由がある場合には、法務大臣によって入国が特別に許可されることがあります。これを「上陸特別許可」と呼んでいます。


この点、平成21年改正入管法(平成21年7月15日公布)で新設された「上陸の拒否の特例」(入管法第5条の2)が平成22年7月1日より施行されております。


「上陸の拒否の特例」とは、以下のいずれかに該当する場合で法務大臣が相当と認めるときは、不法残留により退去から5年を経過していないなど一定の上陸拒否事由が該当している場合であっても、そのことのみをもっては上陸を拒否しないこととすることができる、とする制度です。


@再入国許可が与えられた場合

A難民旅行証明書が交付された場合であって、在留資格を有する場合

B在留資格認定証明書が交付された場合

C査証(ビザ)を取得した場合で特別の理由があると法務大臣が認めた場合


2010年7月20日、金賢姫元工作員が来日しましたが、「上陸の拒否の特例」を適用した第1号と報道がありました(上陸特別許可による来日と報道するものもありました。)。上記Cに該当する形で処理されたのかもしれません。


従来、上陸拒否事由に該当する者が来日しようとする場合、在留資格認定証明書の交付申請を行い、在留資格認定証明書が交付されても、来日の際、空港で上陸特別許可を受けるという形で来日していました。


上記Bのとおり、在留資格認定証明書が交付された場合が「上陸の拒否の特例」の対象となったので、今後、在留資格認定証明書が交付されている場合は、「上陸の拒否の特例」として、上陸特別許可を経ずに入国する事案が増えるのではと思います(上陸の拒否の特例の対象とならない上陸拒否事由に該当する場合については、従来どおり上陸特別許可を経ずには入国できません。)。



Q2.上陸拒否事由の例としてどのようなものがあるか?


A2.次のような場合があります。

・はじめてオーバーステイで摘発され、退去強制処分となった場合

上陸拒否期間が5年の「上陸拒否者」となります。

※過去にオーバーステイで摘発されたことがある場合は、上陸拒否期間が10年の「上陸拒否者」となります。

オーバーステイで摘発され、懲役1年以上の有罪判決を受けた場合は、たとえ執行猶予判決であっても上陸拒否期間が永久の「長期上陸拒否者」となります。再来日を実現するためには、上陸特別許可を念頭に在留資格認定証明書の交付申請を行なうことになります。



・在留資格「日本人の配偶者等」で在留する者(日本人の配偶者)が傷害罪で懲役3年執行猶予5年の有罪判決を受けた場合

上陸拒否期間が永久の「長期上陸拒否者」となります。

※在留資格「日本人の配偶者等」や「永住者」などその身分に基づいて在留する外国人の場合、懲役1年超の有罪判決であっても、執行猶予判決であれば退去強制事由とはなりません(退去は強制されませんが、上陸は拒否される状態です。)。しかし、就労資格で在留する外国人の場合は、傷害罪で1年未満の有罪判決を受けた場合は、たとえ執行猶予判決であっても退去強制事由に当たります(入管法第24条第4の2)。



・売春やその管理を行い、
退去強制処分となった場合(有罪判決を受けなくても)

⇒上陸拒否期間が永久の「長期上陸拒否者」となります。



Q3.上陸特別許可や上陸の拒否の特例の”申請”はどのようにすればいいのか?


A3.上陸特別許可は、「特別に上陸を許可すべき事情」の有無を法務大臣が判断し、一方的に許可するものです。すなわち、「外国人の申請」に対して法務大臣が許可するものではありませんので、「申請」方法や「申請」手続きは存在しません。「在留特別許可」と同様です。


この点、「上陸の拒否の特例」も一定の事由に該当する場合に法務大臣の裁量で上陸を拒否しないとする制度なので同様といえます。


もっとも、上陸特別許可や上陸の拒否の特例を期待して、実務では在留資格認定証明書の交付申請を行なうので、この申請が事実上、
上陸特別許可や上陸の拒否の特例として捉えられている面はあります。



Q4.「上陸特別許可」をもらうためには、あるいは「上陸の拒否の特例」あたると判断されるためには、どうすればいいのか?


A4.「上陸特別許可」は外国人の上陸審査の際になされます。よって、まず日本の空港まで来て、「上陸の申請」をしなければ、
「上陸特別許可」をもらうことは不可能です。しかし、そもそも「上陸拒否事由」に該当しているわけですから、通常、査証(ビザ)が発給されず、飛行機に乗せてくれないでしょう。


では、どうすれば査証(ビザ)が発給されるようになるのか?


この点、入管実務上、上陸拒否事由に該当しているにもかかわらず、「在留資格認定証明書」が交付された場合、一般に査証(ビザ)が発給されています。「上陸拒否事由」に該当する外国人でも、日本にいる夫や妻を代理人として在留資格認定証明書の交付申請が可能です。


もちろん、「上陸拒否事由」に該当している以上、通常の外国人と同じ基準で審査されるわけではありませんが、日本人と婚姻しているなど一定の場合には、人道的な理由から在留資格認定証明書が交付されています(実態のある日本人との婚姻がありさえすれば、必ず在留資格認定証明書が交付されるわけでもありません。)。


在留資格認定証明書が交付された場合は、事前に地方入国管理局に、いつ、どの飛行機で来日予定かなどを伝えておきます。在留資格認定証明書交付申請の審査で一度判断されているので、通常、空港での上陸審査で「上陸特別許可」となり入国できます。


また、「上陸の拒否の特例」の対象となる上陸拒否事由該当者の場合、在留資格認定証明書が交付された場合は、上陸特別許可を経ずに入国が認めされることがある点については上記に述べたとおりです。



Q5.上陸特別許可の前提としての在留資格認定証明書どのような場合に交付されているのか?


A5.まず、「身分資格」であることが重要です。すなわち、日本人の夫・妻や子に与えられる在留資格「日本人の配偶者等」(いわゆる結婚ビザ)などの場合です。この点、当事務所では、在留資格「永住者の配偶者等」(永住者の配偶者)の在留資格認定証明書が交付されたことがありますが、かなり稀なケースだと思います。


日本で就職したことなどを理由に在留資格「技術」や「人文知識・国際業務」(いわゆる就労ビザ)の在留資格認定証明書の交付申請をしても、交付される可能性は極めて低いです(法律上は交付することも可能ですが、私は実例を知りません)。


つぎに、「事案として熟していること」が必要と思われます。このような言い回しを入国管理局が使っているわけではありませんが、私が具体的ケースの交付可能性を判断する場合、「事案の熟度」を考えます。


どのような場合に私が「熟している」と考えるかは、実務経験や知識に基づくものなので、ひとことで説明しにくいのですが、概ね次ぎのような要素が重要になると思います。


@ 一定期間の経過

たとえば、過去にオーバーステイがあった外国人は、原則5年間の上陸拒否と入管法で決まっています。にもかかわず、退去強制後1年で入国を許可するという判断はどうでしょうか?例外として入国を認めるにはやはりある程度の期間の経過は必要となります。ただ、個別事情によるので早期の入国が許可されるケースもあります(マスコミで取り上げられた事案で法務大臣が退去強制から1年程度での入国を認めると発言したケースは記憶に新しいです。)。


もっとも、かつてオーバーステイの上陸拒否期間を1年とする規定を5年に改正する際、衆議院、参議院は、上陸特別許可の判断にあたり「家族としてのつながり」(家族的結合)を尊重すべきであるとする注文(附帯決議)をしました。よって、必ず5年間経過しないと日本人の家族である外国人の上陸を認めないというのも国民の意向に反します。


第2次出入国管理基本計画(平成12年3月24日法務省告示第119号)

「日本人、永住者又は特別永住者との身分関係を有するなど、我が国社会とのつながりが十分に密接と認められる不法滞在者に対しては、これまで行ってきたように人道的な観点を十分に考慮し、適切に対応していく」(V2(2))



平成11年の出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案可決の際の衆参両法務委員会における付帯決議

「退去強制者の上陸拒否期間の延長、不法在留罪の新設等に伴い、退去強制手続、上陸特別許可、在留資格認定書の交付、在留特別許可等の各制度の運用に当たっては、当該外国人の在留中に生じた家族的結合等の実情を十分考慮すること」



A 交流の有無・内容(密度)

日本にいる夫(妻)と外国にいる妻(夫)との交流が希薄な場合、「一定の期間」が経過していても「熟している」とはいえません。やはり夫婦である以上、たとえ離れ離れであっても、「夫婦としての実体・実質」が重要となります。


お仕事や経済的な理由で困難な面もあるかと思いますが、可能な限り日本にいる夫(妻)は海外の妻(夫)とその母国や第三国で会い、手紙やメールのやり取りはも頻繁に行なうなど、夫婦としてのつながりを大切にしてください。



B 真摯な反省

そもそも上陸拒否事由に該当するのは、好ましくない過去があったと入管法が判断したからなのは否定できません。たしかに、たとえ法を犯した過去があっても、日本で待つ夫(妻)にとっては、外国の妻(夫)は愛しい存在です。


しかし、在留資格・ビザの問題は個人間の問題を離れて、「国と国」、「国と個人」の問題となります。過去について真摯に反省し、今後は法令を遵守することを強く決意することがなによりも大切となります。



Q6.上陸特別許可の前提としての在留資格認定証明書の交付申請の際注意すべき点はなにか?


A6.「在留特別許可」の場合にも言えることですが、なによりも嘘をつかないことです。

経験のある入国審査官なら、申請の嘘はすぐ分かります。上陸拒否事由に該当する以上、人に言いにくい過去があるのが普通です。つまらない嘘をついていつバレれるのかと怯えて審査の結果を待つよりは、交付のために一見マイナスと思われる事実であっても、自ら告白すべきです。どうせ疑われること、聞かれることは、疑われる前、聞かれる前にこちらから話しましょう。

結局、そのような姿勢がいい交付に結びつきます。



Q7.一生、上陸拒否事由該当者なのか?


A7.上陸拒否期間のない上陸拒否者の場合は、残念ながら、一生「上陸拒否事由」に該当したままです。


この点、従来は、再入国許可を得て出国しても、再入国時、再度「上陸特別許可」を得ないと入国できませんでしたが(もっとも、再入国許可をもっていれば、通常、上陸特別許可となりますが)、再入国許可を得た場合は、上記のとおり「上陸の拒否の特例」の対象となるので、今後は一般に「上陸特別許可による入国」という形にはならないでしょう。





【関係法令】

出入国管理及び難民認定法
(法務大臣の裁決の特例)
第十二条  法務大臣は、前条第三項の裁決に当たつて、異議の申出が理由がないと認める場合でも、当該外国人が次の各号のいずれかに該当するときは、その者の上陸を特別に許可することができる。
一  再入国の許可を受けているとき。
二  人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に入つたものであるとき。
三  その他法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき。
2  前項の許可は、前条第四項の適用については、異議の申出が理由がある旨の裁決とみなす。




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2008年10月06日

永久(長期)上陸拒否事由該当者の入国


【一般】

上陸拒否事由該当者を「上陸拒否期間」で分類すると次ぎの4種類になります。


1.上陸拒否期間が1年である者

2.上陸拒否期間が5年である者

3.上陸拒否期間が10年である者

4.上陸拒否期間が永久である者(「長期上陸拒否者」ともいいます)


ここでは、4.をとりあげたいと思います。


4.に該当する代表的な場合が、「1年以上の懲役若しくは禁固に
処せられたことのある者」です。


この点、行政解釈は、「処せられた」には、
執行猶予が付された場合も含まれるとしています。


たとえば、不法残留の罪などで懲役1年の判決を受け、これに執行猶予が付された場合であっても、いったん退去強制処分となると、当該外国人は永久に上陸拒否事由該当者となります。

※このような場合、退去強制手続において在留特別許可となるよう当局に働きかける必要性が大きいことになります。


ところで、長期上陸拒否事由該当者も将来まったく再来日が不可能となるわけではありません。


その者の上陸手続きにおいて法務大臣が「上陸特別許可」を与えれば、再び日本に上陸することが可能となります。


実務上は、来日にあたり事前に地方入国管理局にに在留資格認定証明書の交付申請をすることになります。


日本人と結婚し、かつ婚姻の実体が強固など特に人道上酌むべき事情がある場合などには、「日本人の配偶者等」の在留資格認定証明書が交付されることも少なくありません。


在留資格認定証明書の交付後は、在外の日本大使館・領事館にて特定査証の発給を受け、上陸審査時に上陸特別許可を受けることになります。


最近では、長期上陸拒否事由該当者の上陸特別許可もめずらしくなくなってきました。


配偶者が長期上陸拒否事由該当者である場合、法律上・事実上実に多くの困難に直面しますので、長期上陸拒否者との婚姻を考えられている方は、相応の覚悟が必要です。


私の経験上、パートナーが長期上陸拒否者である場合、困難に直面している分、夫婦の絆が強く、婚姻の実体に問題のないケースが多いと感じています。




なお、入管規則6条の2第5項は、上陸拒否事由に該当する外国人には在留資格認定証明書を「交付しないことができる。」としてます。

反対解釈として、上陸許可条件に適合する場合、「交付しなければならない。」とこうことになり、この規則は上陸許可が覊束行為とされることの根拠となると思います。