出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令の一部を改正する省令について

定めようとする命令等の題名)
出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令の一部を改正する省令
根拠法令条項)
出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第7条第1項第2号
案の公示日)2009年2月6日
意見・情報受付開始日)2009年2月6日

【上記省令改正案の概要】

企業内転勤の形態で,本邦の事業所において在留資格「研究」の活動に従事しようとする外国人について,申請に係る転勤の直前に外国にある本店,支店その他の事業所において1年以上継続して在留資格「研究」の項に掲げる業務に従事している場合には,①大学(短期大学を除く。)を卒業し若しくはこれと同等以上の教育を受けた後,従事しようとする研究分野において修士の学位若しくは3年以上の研究の経験(大学院において研究した期間を含む。)を有すること,又は,②従事しようとする研究分野において10年以上の研究の経験(大学院において研究した期
間を含む。)を有することを要しないとするもの。



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出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令の一部を改正する省令についての意見

平成20年3月9日

   行政書士 林   幹

1.在留資格「研究」の在留資格該当性の不明確さ−企業内転勤の形態の意義

出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令の一部を改正する省令(以下「本改正案」とする)は、企業内転勤の形態で、本邦の事業所において在留資格「研究」の活動に従事しようとする外国人については、現行の出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(以下「基準省令」とする)が求める学歴・実務経験を不要とする。

在留資格「研究」は、「本邦の公私の機関との契約に基づいて研究を行う業務に従事する活動」(出入国管理及び難民認定法別表第1の2(以下「法別表第1の2」とする))であるが、本改正案は、企業内転勤の形態、すなわち、「本邦に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において研究を行う業務に従事しようとする場合」が在留資格「研究」の在留資格該当性を有することを前提としている。

この点、企業内転勤の形態の意義をめぐり、以下のとおり疑問がある。この結果、在留資格「研究」がいかなる活動を想定しているのか、その在留資格該当性の意義が不明確となる。

以下、詳述する。

本改正案における「本邦に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において研究を行う業務に従事しようとする場合」とは、在留資格「企業内転勤」の在留資格該当性に係る文言(法別表第1の2)を踏襲したものである。よって、企業内転勤の形態の意義については、在留資格「企業内転勤」における解釈に従うものと思われるが、企業内転勤の形態の意義については、次のような問題がある。

この点、在留資格「企業内転勤」に係る入国在留審査要領の関係箇所は、「『転勤』は、通常、同一会社内の異動であるが、系列企業内(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和38年11月27日大蔵省令第59号)第8条にいう「親会社」、「子会社」及び「関連会社」を指す。以下、「親会社」、「子会社」及び「関連会社」については、同規則の定義による。)の出向等も『転勤』に含まれる。」と規定する。

思うに、「本邦に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行う」との在留資格「企業内転勤」の文言(法別表第1の2)は、同一会社内の異動を対象とするようにも思える。

企業内転勤の形態が、同一会社内の異動のみを対象とする限り、在留資格「技術」及び「人文知識・国際業務」(以下「『技術』等」とする)における「本邦の公私の機関との契約に基づく活動」に「本邦に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行う」を含めて理解することは、一応可能である(「本邦の」の解釈に疑義はあるが)。

すなわち、平成16年2月17日付法務省入国管理局入国在留課事務連絡(以下「平成16年事務連絡」とする)は、「『本邦の公私の機関』は自然人又は法人格を有する団体を意味し、外国法人の支店、支社等については外国法人となるが、このときの外国法人は外国の公私の機関であると同時に本邦の公私の機関でもある。」とする。

しかし、前述のとおり、入国在留審査要領は、在留資格「企業内転勤」を新設した平成元年改正法の立法趣旨を踏まえ、在留資格「企業内転勤」の活動類型として、「親会社」と「子会社」間のような系列企業内の異動をも想定している。

この点、「系列企業内の異動」をも在留資格「企業内転勤」の活動類型に含めると、在留資格「技術」等における「本邦の公私の機関との契約に基づく活動」に「本邦に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行う」を含めて理解することには、次ぎのような困難が生じる。

例えば、外国法人(親会社)の職員が、その日本法人(子会社)に転勤するときで、当該職員が外国法人(親会社)との契約に基づいて、日本法人(子会社)にて就労する場合を考えてみる。

この場合、当該外国人は、あくまでも親会社たる外国法人との契約に基づいて活動する(外国法人の日本支店等で就労する場合は、法人格のない日本支店と契約することはできないが、この場合は、子会社たる日本法人と契約して就労することも可能である。但し、給与体系の問題などから、親会社たる外国法人に在籍したまま、子会社たる日本法人での就労を希望するケースがある。)

よって、親会社たる外国法人を「本邦の公私の機関」とする解釈を採用しなければ、「本邦の公私の機関との契約に基づく活動」に「本邦に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行う」を含めて理解することはできない。しかし、外国法に基づき設立され、外国に本社を有する外国法人を「本邦の公私の機関」とする解釈には疑義がある。

この点、平成16年事務連絡は、「『企業内転勤』の在留資格における「公私の機関」には、親会社、子会社、関連会社の関係にある会社も同一の公私の機関の一部とされているところ、『技術』及び『人文知識・国際業務』の在留資格における『公私の機関』についても、『企業内転勤』の在留資格における『公私の機関』と同様に取扱うことが可能である。」とする。

すなわち、外国法人(親会社)の職員が、その日本法人(子会社)に転勤する場合は、当該外国法人と当該日本法人は、それぞれが「同一の公私の機関の一部」となる以上、当該外国法人と当該職員が契約をしていれば、当該日本法人に就労する場合も、「本邦の公私の機関との契約」に基づく活動とする。

この解釈によれば、外国法人(親会社)の職員が、その日本法人(子会社)に転勤するときで、当該職員が外国法人(親会社)との契約に基づいて、日本法人(子会社)にて就労する場合は、在留資格「企業内転勤」のみならず、「技術」等にも該当するようにも思われるが、一部地方入国管理局を除き、そのような運用は地方入国管理局ではなされていない。

2.在留資格「研究」と「技術」「人文知識・国際業務」との不整合

基準省令の改正により、企業内転勤の形態を在留資格「研究」に取り込もうとする本改正案は、在留資格「技術」等における企業内転勤の形態を在留資格「企業内転勤」として規定する出入国管理及び難民認定法と不整合である。

以下、詳述する。

在留資格「企業内転勤」は、「技術」等に該当する活動を、企業内転勤の形態で行う場合を規定している。

思うに、在留資格「研究」も、「技術」等と同様に、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う活動」である以上、本来、在留資格「企業内転勤」に係る法別表第1の2を改正して、「研究の項の下欄に掲げる活動」を在留資格「企業内転勤」の活動類型に含めるべきである。

本改正案は、前述のとおり、企業内転勤の形態が在留資格「研究」の活動類型に含まれることを前提として、企業内転勤の形態で行う「研究」活動を、在留資格「研究」に含めようとするものであるが、これを基準省令の改正により行うことは、平成元年の出入国管理及び難民認定法改正において、あえて在留資格「技術」等とは別に、在留資格「企業内転勤」を新設したことの意義に鑑みて、在留資格「技術」等と比較して不整合である。

3.「規制改革推進のための3か年計画(改定)」における措置内容との不一致

本改正案は、「規制改革推進のための3か年計画(改定)」における措置内容に一致していないと考える。

以下、詳述する。

本改正案の契機となった「規制改革推進のための3ヵ年計画(改定)」(平成20年3月25日閣議決定)の措置内容(以下「措置内容」とする)は、「転勤に伴い入国する外国人について、在留資格『企業内転勤』において求められる『就業経験1年以上』の要件が高度な技術・知識等を有する外国人の転勤の障害となる場合には、制度の悪用防止にも配慮しつつ、その見直しも検討する。」としている。すなわち、本改正案は、「就業経験1年以上」の要件の見直しを検討した結果の措置であると理解する。

しかし、本改正案は、企業内転勤の形態の場合には、「就業経験1年以上」であることを条件に、在留資格「研究」の基準省令が求める学歴・実務経験を不要とするものであり、「就業経験1年以上」の要件を高度な技術・知識等を有する外国人の転勤の障害となるとして見直したものではない。むしろ、「就業経験1年以上」の要件を満たすことを条件に、実質的に、在留資格「研究」の対象となる外国人の活動を拡大したものである。

思うに、「就業経験1年以上」の要件が高度な技術・知識等を有する外国人の転勤の障害となる場合とは、在留資格「技術」等に該当しないため、在留資格「企業内転勤」で入国せざるを得ないが、「企業内転勤」における「就業経験1年以上」が障害となって入国できないような場合である。

従来、このような場合としては、外国法人の海外本社から日本支店(又は駐日駐在員事務所)に転勤する場合があったが、平成16年事務連絡により、当該外国法人との契約自体をもって、「本邦の公私の機関との契約」に該当する旨明示されたので、「就業経験1年以上」の要件との関係で、在留資格「企業内転勤」に該当しない場合でも、学歴・実務経験の要件を満たせば「技術」等に該当することになった。

残る問題として、前述の外国法人(親会社)の職員が、その日本法人(子会社)に転勤するときで、当該職員が外国法人(親会社)との契約に基づいて、日本法人(子会社)にて就労する場合がある。

このような場合、地方入国管理局における運用では、在留資格「企業内転勤」には該当するものの、在留資格「技術」等には該当しないとされている(一部の地方入国管理局では異なる判断事例もある)。

前述のとおり、平成16年事務連絡に従うと、親会社たる外国法人の職員が、その子会社たる日本法人に異動する場合には、当該外国法人と当該日本法人は、それぞれが「同一の公私の機関の一部」となるとする解釈を明らかにしているので、親会社たる外国法人との契約をもって、「本邦の公私の機関との契約」とし、在留資格「技術」等の該当性が認められると解される。

しかし、実際は、地方入国管理局において、そのような運用はなされていない。

従って、在留資格「技術」等の該当性が認められないこの事案では、まさに現実に在留資格「企業内転勤」における「就業経験1年以上」の要件が高度な技術・知識等を有する外国人の転勤の障害となっているのである。

在留資格「企業内転勤」は、企業内転勤の形態に該当する場合、「就業経験1年以上」の要件を求めることにより、在留資格「技術」等において必要とされる学歴・実務経験を不要としたものである。たしかに、企業内転勤の形態に該当する場合は、国境を超えた「ヒト」の円滑な移動の必要性は高い。しかし、学歴・実務経験を不要とする以上、「就業経験1年以上」の要件は、企業内転勤の形態であっても、いわゆる単純労働者の入国を認めないためには最低限必要であると考える。

4.抜本的解決の必要性

以上のように、在留資格「技術」等と「企業内転勤」との間には、現行法を前提とする限り解釈が困難な問題があるため、出入国管理及び難民認定法の改正も念頭において抜本的解決が必要であると考える。

以下、詳述する。

「本邦の公私の機関との契約に基づいて研究を行う業務に従事する活動」である在留資格「研究」に、企業内転勤の形態が含まれることを前提とする本改正案を見る限り、法務省は、「本邦の公私の機関との契約に基づく活動」である在留資格「技術」等に、在留資格「企業内転勤」の活動類型である「本邦に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行う場合」が含まれるとの解釈をとっていると思われる。

しかしながら、前述のとおり、在留資格「企業内転勤」と「技術」等の整合性を図ろうとした平成16年事務連絡をもってしても、両者の整合性が解決された状況にはない。むしろ、平成16年事務連絡は、在留資格「企業内転勤」と「技術」等の整合性に係る問題状況を浮き彫りにしたとも言える。

出入国管理及び難民認定法の法別表が規定する在留資格の抜本的な改正によって、各在留資格の整合性を図ることは、安定的な外国人の出入国管理を行う上で必須であると考える。

 

以上




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