【専門家向け】



 「投資・経営」係る上陸許可基準における「当該事業がその経営または管理に従事する者以外に二人以上の日本国に居住する常勤の職員が従事して営まれる規模のものであること」は、法務省によると、日米友好通商航海条約第1条1(b)の「外国人が具体的な額の資本を投資した企業または具体的な額の資本を投資した過程に現実に在る企業」を具体化したものとされております。

参照:市場開放問題苦情処理推進会議第6回報告書

 そうであるならば、「二人以上の日本国に居住する常勤の職員」の存在は、「規模」を判断するための一要素であり、「二人以上の日本国に居住する常勤の職員」の存在自体は、本来、上陸許可基準適合性にとって不可欠の条件ではないことになると思われます。


 問題なのは、「 規模のものである」かどうかです。


 しかし、入管業務を行う実務家にとっては周知のとおり、かつて(一部例外を除き平成15年ごろまで)、「二人以上の日本国に居住する常勤の職員」の存在は、「規模」を判断するための一要素ではなく、「二人以上の日本国に居住する常勤の職員」の存在が上陸許可基準適合性にとって不可欠の条件として地方入国管理局は運用していました。

 
 このような状況のもと、平成10年10月14日、大韓民国総領事館が、OTO会議に次ぎのとおり問題提起しました。

 「日本では、『投資・経営』の在留資格を受けるためには、日本人を2名以上雇用しなければならない。この条件を満たそうとすると、日本で法人を設立する際の 人件費の負担が非常に重くなり、法人の設立自体が難しくなる。したがって、対日投資促進の観点から、「投資・経営」の在留資格を受けやすくなるよう上記条 件を廃止すべきである。」

参照:市場開放問題苦情処理推進会議第6回報告書


 これに対し、法務省入国管理局は、当初「在留資格『投資・経営』に係る基準は、事業の安定性・継続性を確保するために必要なものであり、現時点の諸状況に照らしても妥当な要件であるとして、その運用も含めて見直しを行う必要はない」していましたが、

「必ずしも現地人2人の雇用がなくとも、『その程度の規模』の投資があれば、投資・経営者としての上陸が許可される」とするようになりました。


 そのうえで、法務省入国管理局は、「現行の審査基準の運用上、当該基準が現地人2人を雇用する『程度の規模』を要求しているその趣旨が徹底されていなかった面がある」と認め、「今後は、相当額の投資が行われていることが認められる場合には、現地人2人の雇用がなされなくとも、投資・経営での入国を許可する運用を行う、(2) 実用例を踏まえながら、できるだけ合理的な審査上のガイドラインを定める努力を行う」としました。


 これを受けて次ぎのとおり、平成12年3月21日のOTO対策本部決定が出されました。

(決定内容)
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在留資格「投資・経営」に関し、以下の対応を取る。

(1) 在留資格「投資・経営」に係る基準においては、必ずしも現地人2人の雇用がなくとも、「その程度の規模」の投資があれば、投資・経営者としての上陸が許可されるが、現行の審査基準の運用上、その趣旨が徹底されていなかったことから、今後は、相当額の投資が行われている場合は現地人2人の雇用がなされなくとも「投資・経営」の在留資格での上陸を許可するよう早急に各地方の入国管理局にその趣旨を徹底する。

(2)
2人以上の者が常勤職員として従事して営まれる規模を明確化するため、2人を雇用しない場合の合理的な審査上のガイドラインを平成12年中に作成する。

(3) インターネットを介したビジネスなど、必ずしも2人を雇用しなくとも相当規模の事業を継続的、安定的に運営できる新しい事業形態の企業についても、対日投資促進の観点からこれらの企業を積極的に受け入れるべく、ガイドラインに基づいて、円滑な投資・経営者の入国・在留管理を行う。

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 この結果、「常勤職員が2名以上いない場合」のガイドラインとして「新規事業を開始しようとする場合の投資額が年間500万円以上であること」を旨とする「規模」を判断するためのガイドラインが策定され、下記通達によって法務省入国管理局から地方入国管理局に指示されるに至りました。  


【平成12年12月25日 局長通達 法務省管在第4135号】
「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令の在留資格「投資・経営」の上陸許可基準に係るガイドラインについて」
(全文:PDFファイル)


【平成12年12月25日 事務連絡】
「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令の在留資格「投資・経営」の上陸許可基準に係るガイドライン策定の背景及びその運用について」
(全文:PDFファイル)



※OTO(オーティーオー)とは、Office of Trade and investment Ombudsman(市場開放問題苦情処理体制) のことで、輸入や対日投資の障壁となっている具体的政府規制等に関する苦情を内外の企業等から政府が受け付けるシステムです。平成19年1月には、規制改革会議の体制にその個別苦情を処理する機能が引き継がれました。



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