【専門家向け】


在留資格「短期滞在」には、「本邦に短期間滞在して行う観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡その他これらに類似する活動」が該当すると入管法別表第一の三によって規定されています。


「観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡その他これらに類似する活動」は、次の2つの活動に分けられます。


①「観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡」


②「その他これらに類似する活動」


「観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡」の活動のそれぞれに「類似する活動」がありますので、入管法が規定する「短期滞在」の活動は、次ぎの8とおりとなります。


1)「観光」及び「その類似活動」

例)観光、娯楽、参詣、通過の目的での滞在


2)「保養」及び「その類似活動」 

例)保養、病気治療の目的での滞在


3)「スポーツ」及び「その類似活動」 

例)競技会、コンテスト等へのアマチュアとしての参加


4)「親族の訪問」及び「その類似活動」 

例)友人、知人、親族等の訪問、親善訪問、冠婚葬祭等への出席


5)「見学」及び「その類似活動」 

例)見学、視察等の目的での滞在


6)「講習への参加」及び「その類似活動」

例)教育機関、企業等の行う講習、説明会等への参加、報酬を受けないで行う講義、講演等


7)「会合への参加」及び「その類似活動」

例)会議その他会合への参加


8)「業務連絡」及び「その類似活動」

例)本邦に出張して行う業務連絡、商談、契約調印、アフターサービス、宣伝、市場調査その他いわゆる短期商用


しかし、行政解釈(入国在留審査要領)は、以上の入管法で規定された8類型以外にも次ぎのような活動が「短期滞在」に該当するとしています。


①報道、取材等我が国を訪れる国賓等、スポーツ選手等に同行して行う取材活動等のうち一時的用務

②本邦の大学等の受験、外国法事務弁護士となるための承認を受ける等の手続

③本邦の大学又は本邦の専修学校を卒業した留学生が、卒業前から引続き行っている就職活動を卒業後に継続して行う活動

④その他本邦において収入を伴う事業を運営し又は報酬を得る活動をすることのない短期間の滞在


上記④の「本邦において収入を伴う事業を運営し又は報酬を得る活動をすることのない短期間の滞在」が「短期滞在」の基礎であることは疑いありません。


しかし、法は、「本邦において収入を伴う事業を運営し又は報酬を得る活動をすることのない短期間の滞在」のうち、上記1)から8)の8類型に該当する活動のみを「短期滞在」として規定したのではないでしょうか?


行政解釈は、上記1)から8)をもって「短期滞在」の活動類型を限定列挙したものではなく、”その活動類型を例示したもの”としなければ成立しない解釈です。


かりにそのように解釈した場合、「短期滞在」の実質は、「本邦において収入を伴う事業を運営し又は報酬を得る活動をすることのない短期間の滞在」のみとなり、あまりにも無限定な在留資格ということになってしまいます。


無限定、開かれているという意味では、法務大臣が特に指定し、あるいは特別な理由を考慮して付与する「特定活動」や「定住者」と同様の資格ということになります。


しかし、「短期滞在」には「本邦において収入を伴う事業を運営し又は報酬を得る活動をすることのない短期間の滞在」が広く該当するとする解釈には次ぎの点で賛成できません。


1.形式的根拠

「短期滞在」を規定する入管法の別表には、「観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡その他これらに類似する活動」とあり、「観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡”等”」となっていないこと(あくまでも「観光・・・」とその類似活動のみを限定的に規定しています)


2.実質的根拠

「短期滞在」を「本邦において収入を伴う事業を運営し又は報酬を得る活動をすることのない短期間の滞在」を広く意味するものとして運用することが、他の在留資格との境界を曖昧にし、入管行政に不安定さを与えていること。


たとえば、在留資格「文化活動」も「本邦において収入を伴う事業を運営し又は報酬を得る活動をすることのない滞在」ですが、本来「文化活動」としての該当性を検討すべきケースが、「短期滞在」に該当するものと判断され、在留資格認定証明書が交付されにくくなっています。

かつて外国人ミュージシャンの無報酬による公演活動に対して東京入国管理局興行部門から、「短期滞在」での入国をアドバイスされたことがあります。しかし、公演活動は、「短期滞在」の列挙するどの活動にも該当しません。かりに「本邦において収入を伴う事業を運営し又は報酬を得る活動をすることのない滞在」に当る以上、「短期滞在」での来日が可能と判断しても、空港での上陸審査の際、公演活動は「短期滞在」に該当しないことを理由に上陸を拒否されるおそれがあります。

東京入管と成田入管とで同様の判断をしてくれるのかどうか常に不安がつきまとうのが現状です。


現在、「短期滞在」で処理されている上記①から③について上陸の必要性を否定するつもりはありません。私は、このような場合、「短期滞在」によるのではなく、「特定活動」を活用すべきと考えます。

この点、かつて在留期間の更新が不許可となった場合などに付与される出国準備期間は「短期滞在」で処理されていましたが、現在は「特定活動」で処理されています。

また、上記③のとおり、大学卒業後の就職活動は、「短期滞在」として処理されるものの、就職活動の結果内定を得た場合、入社までの期間は「特定活動」で処理されていますが、内定前と内定後という違いがあるのせよ、卒業後の活動という点で共通しており、一律に「特定活動」で処理してもいいのではないでしょうか。


現在では、留学生の大学卒業後の就職活動に対しては、「特定活動」が付与されています。2009年8月27日開示の入国在留審査要領では、「短期滞在」を付与するものとされ、2010年1月25日開示の入国在留審査要領では、「特定活動」を付与するものとされているので、2009年8月27日から2010年1月25日の間に、取扱い変更があったものと推測されれます。

2012年6月7日追記

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