2008年09月10日

中国企業による対日投資−対日投資の形態と在留資格との関係


【一般】


1.はじめに−対日投資における在留資格検討の必要性


対日投資に伴い人員を中国から派遣する場合、必ず問題となる在留資格です。


日本法人などを設立しても最終的に在留資格を取得できない場合、対日投資計画が大きく影響を受けます。またビザ・在留資格取得のため時間がかかればかかるほど事務所の賃貸料などの経費が無駄になって しまいます(在留資格の取得申請は、事務所の確保後となります)。


中国企業が対日投資を行おうとする場合、その形態として次ぎの3つがあります。

@駐在員事務所の設置

A日本支店(営業所)の設置

B日本法人(中国企業を親会社とする子会社)の設立


これら@ABのうち、どの方法で日本進出するか検討する際、常に在留資格の問題を念頭に置く必要があります。


単に駐在員事務所、日本営業所、日本法人を設置・設立すれば足りるのはなく、在留資格が許可されるような実態を有する規模でそれらを設置・設立する必要があります。


2.以下、それぞれの対日投資の形態に対応した在留資格を検討してみたいと思います。


(1)駐在員事務所⇒在留資格「企業内転勤」「人文知識・国際業務」(「投資・経営」)


駐在員事務所は、市場調査や本社との連絡業務など行います。本格的な対日進出を行う場合の前段階に適した形態です。


駐在員事務所には、法人格はありません。登記もできない単なる事実上の存在です。したがって、その存在を公的に証明することはできません(事務所の賃貸借契約書で事実上その存在を証明することは可能です)。
事務所の駐在員は、個人として所得税の確定申告を行う必要があります。


たしかに、日本進出の当初においてはコスト節約の観点から駐在員事務所の設置が最も適した方法のように思われます。


しかし、設置の簡便さは同時に、「事業所としての不安定さ」を意味します。その意味で駐在員が在留資格を取得するためには、事業所として事実上安定的であること、本社の経営基盤が磐石であることなどをしっかり立証する必要があります。


駐在員事務所に勤務する者は、在留資格「企業内転勤」若しくは「人文知識・国際業務」「技術」を取得する必要があります。事業所としての規模が大きい場合には、「投資・経営」の場合もあります。



 
「企業内転勤」の主な条件


1.日本の事業所に期間を定めて転勤すること。

※「転勤」には、同一会社内における外国の事業所から本邦の事業所への異動のほか、親会社、子会社及び関連会社の相互の異動も含まれます。

2.転勤の直前に外国にある事業所に1年以上継続して勤務していること。

3.転勤前1年以上及び転勤後、「技術」又は「人文知識・国際業務」に該当する業務に従事すること。




(2)日本支店(営業所)の設置⇒在留資格「企業内転勤」「人文知識・国際業務」(「投資・経営」)


日本支店(日本営業所)はいわば中国にある中国企業の「手足」です。「手足」なので、中国本社とは別の存在ではなく、それ自体法人格はありません。しかし、支店登記が可能であるためその存在を公的に証明でき、支店名で銀行口座を開設することも可能です。


営業活動も日本法人と同様に可能です。法人税法上、法人と見なされて課税され(法人と異なり国内源泉所得のみ課税対象となります)、従業員の所得税の源泉徴収の義務があります。


その設置に資本金が不要なのでコスト的には「安上がりな進出形態」といえますが、法人格がない以上、本社の名義での活動となり、対日進出を内密にしたい場合には不向きです。


支店に勤務する者は、在留資格
「企業内転勤」若しくは「人文知識・国際業務」「技術」を取得する必要があります。事業所としての規模が大きい場合には、「投資・経営」の場合もあります。



(3)日本法人の設立⇒在留資格「投資・経営」「企業内転勤」「人文知識・国際業務」「技術」


中国企業が資本金を出資して日本法に基づく法人を設立する形態です。他の日本の会社と同様に日本国会社法に基づく法人です。この点、日本支店(営業所)があくまでも中国法等本国法に基づく法人であることと異なります。


在留資格の付与に不可欠な事業所としての安定性・継続性の観点からは最も適した形態のようですが、日本法人の社長や部長など経営者・管理職として来日される方は「企業内転勤」や「人文知識・国際業務」より条件の厳しい「投資・経営」の在留資格を取得しなければなりません。


日本法人の社長などの役員は、在留資格「投資・経営」を、従業員は「企業内転勤」「人文知識・国際業務」「技術」などを取得する必要があります。



「投資・経営」の主な条件

 
1.事業所として使用する施設が日本国内に確保されていること。

2.日本人、永住者、定住者等の常勤職員2名以上が勤務するか、年間投資額が500万円以上であること。

※対日進出の当初からいきなり2人以上の常勤社員、それも日本人等を雇用することは、経営上なかなか厳しいといえます。しかし、投資額次第では2人以上雇用していなくても「投資・経営」が認められる場合があります。




3.おわりに

在留資格の認定は、個別具体的な事情を考慮して行われております。したがって、上記に記載した条件をクリアーしさえすれば在留資格を自動的に取得できるわけではありません。個別具体的な事情(外国会社・日本法人の業務内容、規模、事業計画、外国人の経験など)によって左右されます。


なにより、在留資格を取得できるような実質をもった形態で、対日投資を行うことが重要です。