応用美術の法的保護
〜著作権法と意匠法との交錯
応用美術とは、「実用に供され、あるいは、産業上利用される美的な創作物」(著作権制度審議会答申説明書(昭和41年7月15日)のことです。
これに対し、「絵画や彫刻のように、専ら鑑賞目的で創作される美的創作物」のことを純粋美術といいます。
「衣類などの大量生産品に用いられる図案等の美的創作物」は、基本的には意匠制度の対象となります。
しかし、その図案等が利用されている有体物である実用品の実用性から離れて「当該創作的表現を独立に評価したとき」に、
純粋な美術作品と同程度の(高度な)創作性を有する場合には、著作権法の適用可能性があるということになります。
(判例の動向)
○「博多人形」事件(長崎地裁佐世保支部昭和48年2月7日決定)
量産品であっても「美術工芸品」に含まれ、著作権法により保護され得る。
○「アメリカTシャツ」事件(神戸地裁姫路支部昭和54年4月9日判決)
「実用目的による実質的制約を受けることなく専ら美の表現を追求したもの」は著作権法の保護対象となり得る。
○「佐賀錦袋帯」事件(京都地裁平成元年6月15日判決)
「実用面から離れて完結した美術作品として美的鑑賞の対象となるもの」は、著作権法の保護対象となり得る。
○「木目化粧紙」事件(東京高裁平成3年12月17日判決)
「高度の芸術性を有し、純粋美術としての性質が是認されるもの」は、著作権法の保護対象となり得る。
通常の著作物の場合は、他の作品を模倣することなく著作者なりの創作活動の成果として表現されていれば著作権法の保護の対象となります。
この点、実用品に利用される場合には特に高度の創作性を要求する趣旨については必ずしも明らかにされていません。
実用品に美的創作物が利用される場合は、「原則」意匠法の対象となり、
「例外的に特別な場合に限り」著作権法の重畳的な適用を認めるべきであるという考え方の下に限定的な判断をしているとも考えられます。
あるいは、実用品に利用される美的表象について、広範囲に著作権法の適用を認めた場合、「改良物品を製作する際」などに、翻案権や同一性保持権に抵触することになると、産業の発展に支障が生じ得るので、
「高度な」美的表現や芸術性を要件とすることにより、通常の改良物品の開発などに過度の制約が加わることを避け、産業界の秩序に混乱を生じさせないように配慮しているとも考えられます。
以上
作花文雄著「詳解著作権法」を参考にさせていただきました。