中国企業による日本進出の方法
はじめに−日本進出形態と在留資格
中国企業が日本進出をする場合、その拠点として@駐在員事務所の設置A営業所(支店)の設置B日本法人設立などが考えられます。
日本進出の際、一番問題となるのが中国から派遣される方の「在留資格」です。27種類ある在留資格のいずれかに該当しなければ日本に入国・滞在することができません。
もっとも、日本人や「永住者」「日本人配偶者等」の在留資格を付与された外国人のみが日本の拠点で勤務なさるのであれば、この点を考慮する必要はなく比較的スムーズに日本進出が可能です。「永住者」や「日本人配偶者等」の在留資格を有する者には、その活動の範囲に制限がないからです。
対日進出の初期においては日本人スタッフで日本拠点の運営を行い、事業の安定的・継続的な遂行が確実となった段階で中国人スタッフを招聘するのもひとつの方法です。
このように、上記@ABのうちどの方法で日本進出するか検討する際、常に在留資格の問題を念頭に置く必要があります。単に駐在員事務所、日本営業所、日本法人を設置・設立すれば足りるのはなく、しかるべき在留資格が付与されるような実態を有する規模でそれらを設置・設立する必要があります。
以下、日本進出の形態に応じて在留資格の問題を検討してみたいと思います。
(1)駐在員事務所‐在留資格「企業内転勤」
駐在員事務所は、市場調査や本社との連絡業務など行います。本格的な対日進出を行う場合の前段階に適した形態です。
駐在員事務所には、法人格はありません。登記もできない単なる事実上の存在です。したがって、その存在を公的に証明するものは何もありません(ぜいぜい事務所の賃貸借契約書ぐらいです)。たしかに、日本進出の当初においてはコスト節約の観点から駐在員事務所の設置が最も適した方法のように思われます。
しかし、在留資格の付与に必要な事業所の安定性・継続性の観点からは難点があります(平成14年度商法改正により代表者の登記を行えば、営業所を設置しなくても営業活動自体は行うことができます)。
事務所の駐在員は、個人として所得税の確定申告を行う必要があります。
一般に駐在員事務所の代表者等には、「企業内転勤」の在留資格が付与されます。
(「企業内転勤」の在留資格が付与されるための主な条件)
1.本邦にある事業所に期間を定めて転勤すること
※「転勤」には、同一会社内における外国の事業所から本邦の事業所への異動のほか、親会社、子会社及び関連会社の相互の異動も含まれます。
2.転勤の直前に外国にある本店、支店その他の事業所において1年以上継続して、入管法別表第1の2の表の「技術」又は「人文知識・国際業務」の項の下欄に掲げる業務に従事していること
※事業の安定性・継続性の観点から、下記の「投資・経営」の在留資格の場合と同様に事業所は衣食住のための施設と独立分離していることが必要と思われます。
(2)営業所(支店・支社)の設置‐在留資格「企業内転勤」
日本営業所(支店・支社)はいわば中国にある中国企業の手足といえます。よって、それ自体法人格はありませんが、支店登記が可能であるためその存在を公的に証明でき、支店名で銀行口座を開設することも可能です。
また法人と同様に営業活動もでき、それらの点で法人の場合と違いはありません。その設置に別途資本金が不要なのでコスト的には「安上がりな進出形態」といえます。駐在員事務所から支店に組織替えをするパターンも少なくありません。
一般に支店長などとして中国等から派遣される社員は、「企業内転勤」の在留資格を付与されます。
外国会社が資本金を出資して日本法に基づく法人を設立する形態です。他の日本の会社と同様に日本国商法・有限会社法に基づく法人です。この点、上記営業所(支店・支社)があくまでも中国法等本国法に基づく法人であることと異なります。
在留資格の付与に不可欠な事業所としての安定性・継続性の観点からは最も適した形態のようですが、日本法人の社長や部長など経営者・管理職として来日される方は「企業内転勤」より条件の厳しい「投資・経営」の在留資格が付与される必要があります。
(「投資・経営」の在留資格が付与されるための主な条件)
1.当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること(事業所は衣食住のための施設と独立分離していることが必要です)
2.当該事業がその経営又は管理に従事する者以外に2人以上の本邦に居住する者(日本人、「永住者」「日本人の配偶者等」に限定)で常勤の職員が従事して営まれる規模のものであること
※2人以上の常勤職員を雇用しない場合について、入国管理局では、その規模のガイドラインを「新規事業を開始しようとする場合の投資額が年間500万円以上であること」と定めています。
※「投資・経営」の在留資格に該当する活動を確実に行って在留するものであると認められることが必要なので、事業の安定性・継続性が必要となります。
対日進出の当初からいきなり2人以上の常勤社員、それも日本人等を雇用することは、経営上なかなか厳しいといえます。しかし、投資額次第では2人雇用していなくても「投資・経営」の在留資格が付与されます。
おわりに
在留資格の認定は法務大臣の広汎な裁量により個別具体的な事情を考慮して行われております。したがって、上記に記載した条件をクリアーしさえすれば在留資格を必ず取得できるわけではありません。個別具体的な事情(外国会社・日本法人の業務内容、規模、事業計画、外国人の経験など)によって左右されます。